第十四話「偽死体験した美少年」

リングに…血に染まったリングに担架が運び込まれた、僕とMくんも手伝って失神した

ままのKくんを担架に乗せた…。

控室に運び込まれたKくん、コーチがマッサージのようなことをはじめた。

「Kくん!Kくん!」僕は叫んでいた…Mくんも「K!しっかりしろ!」って…

しばらくして、Kくんのバンテージを巻いたままの拳が何かをつかむように動いた。

そして、脹れあがった瞼を開けた。「ウウッ…」苦しそうなうめき声をあげるKくん…

コーチが「おい!K!これ何本に見える?」指を出して確認している…

「さ…三本…」「よしっ!しっかりしているな!」今度は懐中電灯を持ってきて目のあ

たりを見ている。「よし!MくんKENNくんロッカーからKくんの洋服を!あっそれから

KENNも着替えて来い」

Kくんのロッカーから可愛い柄の5分袖のTシャツと短い丈のデニムの半ズボン、

それからアディダスのスポーツシューズを…

「とりあえず羽織らせろ!」僕とMくんで汗と血で固まった、いつもはサラサラの長い髪

からTシャツを、真っ赤に染まった胸に通した…

今度は、本当に血まみれの短いトランクスを脱がせて半ズボンを…

「おい!KENNも早く着替えて来い!」

ロッカーに戻って椅子に腰掛ける、心臓が破裂しそうな感じでうまくバンテージが外せない、

やっとの思いで外すと今度はシューズが上手く脱げない…

それにしても…僕の白いシューズも血まみれで…『これ、僕の血なんだ…』

また心臓が不思議に高鳴った。そしてKくんのものにも負けないぐらい

赤茶色に染まった僕のトランクス…半ズボンに履き替えると会長が待っていた。

コーチとMくんの肩に抱かれて会長の車に乗せられたKくん、そして僕…

後ろの席にコーチ、真ん中にKくん、僕…会長は大急ぎで車を病院へ。

「KENNくん、Kくん本当に良く頑張ったな!」会長の声に2人とも答えなかった。

隣のKくんが僕に寄りかかってきた…「ウウッ…」苦しそうな声に目をやると…

ああ…Kくんは脹れあがった瞼から涙を流している、『泣いてるんだ…』

僕は無言でKくんの肩をしっかり抱いていた。「KENNちゃん…KENNちゃん」

か細い声をあげるKくん。無言のまま僕たちは病院に運び込まれた。

車を降りてすぐに院長先生の部屋まで…僕らに注がれる好奇の目…

「いやー…これは…2人とも頑張ったんだね!」

院長先生はボクサーの診察は手馴れているようだった。2人を見るとすぐに看護婦さんに

Kくんの傷の処置を命じた。

その間に僕は色々聞かれた…

「ダウン?何回した?」「2人とも4、5回…多分…」

「ヘットギアしてたの?」「いいえ…」

「なに?してないのか!、ちょっと頭!見せなさい!」

「あーあ…ほら!痛いだろ!たんこぶできてる…」「はあ…」

「会長…」院長は会長の方を向いてまずそうな顔…

「随分硬いグローブだったのかなぁ…」

「最後まで試合?覚えてる?」「いいえ…」

院長の顔が険しくなった。そして僕らはとりあえず脳の検査を受けた。

一通り検査が終わると僕らは2人だけの部屋に移されベッドに寝かされた。

「2人ともしばらく入院だね。まあその顔じゃ女の子もびっくりだろうし、すぐに良くなるよ」

院長が言うと看護婦さんが僕らのところに…

「あらあら!可愛いボクサーちゃん!」「負けちゃったんだ!」

「身体拭いてさっぱりしましょうね!」

看護婦さんが2人の身体の血のりを拭いてくれた、そして2人の血染めのハイソックス

を脱がせてくれた…

バリッ…白かったハイソックス…血でぴったりくっついて、脱がすと言うより剥がす感じで…

「2人とも綺麗なお肌!それにあんよ長いわね!バンビちゃんみたいね!」「…」

2人とも点滴をされると看護婦さんは出て行った。

「Kくん!Kくん!ねえ!大丈夫!」「う、うん…」

ひとごこちつくと猛烈に体中が痛い!顔も、腕も、胸も、おなかも…

「ねえ、Kくん、痛くない?」「いたい…」

それに、お腹が物凄く空いてる…

「おなか…すいたね…」「うん…」

僕はKくんを笑わそうと思って「ねえ、1たす3は?」

「4!大丈夫だよ!僕!」Kくんが笑った!

でもしばらくして今度は「KENNちゃんごめん…」すすり泣きだしたKくん…

「僕のせいで…僕がボクシングなんて…」「いいよ!Kくん!」

「だって、KENNちゃん、リングであんなことされて…」「なーに?」

「覚えてないんだ…」

Kくんは僕の記憶にない部分の話を…

それにしても外が騒がしい、会長と…あっ、僕とKくんのお父さんが…

      続く

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